弦楽四重奏 String Quartet

弦楽四重奏は、ヴァイオリン属4本の楽器からなる合奏形態を指す。主に2本のヴァイオリン、1本ずつのヴィオラ、チェロによって構成される。

沿革

室内楽形態の中で、トリオ・ソナタ(三声ソナタ)の発展形、トリオ・ソナタに存在する通奏低音を用いず、四者が協調して一つの響きを作る性格が強い。68曲の弦楽四重奏曲を作曲したハイドンが「弦楽四重奏の父」と見なされているが、同時代のボッケリーニは90曲以上作曲しており、音楽家としての評価もハイドンに劣るものではなかった。ハイドンは作品33の出版の際に「弦楽四重奏曲」という言葉を初めて積極的に用い、これが定着して「弦楽四重奏」というジャンルが定まることになる。ハイドンに刺激を受けたモーツァルトも引き続き多くの作品を残している。特に代表作「ハイドン・セット」(第14番-19番)は全6曲に2年あまりを費やした力作であった。
その後、ベートーヴェンの中期の傑作群(ラズモフスキー弦楽四重奏曲)により、交響曲と並ぶ作曲家の重要ジャンルとして確立されることになる。以後、シューベルトが15の曲を残したのをはじめ、多くの作曲家がこのジャンルに曲を残し、現代に至るまで多くの曲が作られ、愛されている。そのためもあって、世界中で常設で活躍し続ける団体が多数存在する唯一の室内楽形態ともなっている。

弦楽四重奏曲は、弦楽四重奏による楽曲を指し、室内楽に分類される。構成は基本的に、急-緩-舞-急の4楽章からなり、第1楽章はソナタ形式である(これは交響曲やソナタと同様)。

歴史

バロック晩期

アレッサンドロ・スカルラッティが「四重奏、ただし、通奏低音抜きで」というジャンルを開拓したのが弦楽四重奏曲の始まりである。以後多くの作曲家がこれに倣って作曲した。

古典派

その中でもハイドンはこれの確立に多大な貢献を行い弦楽四重奏曲の父とみなされている。ハイドンの初期の作品(作品1および2)では、現在の弦楽四重奏曲の形とは幾分異なった形式で書かれており、最低音がチェロでなくBassoと記されている、メヌエットが2つあって5楽章形式になっている等がみられる。その後4楽章構成となり(作品9)、太陽四重奏曲(作品20)では最低音がチェロと明記され、ロシア四重奏曲(作品33)で現在につながる古典的ソナタ形式の形が定まった。 ハイドン後期の作品は、現在でも作曲の規範とされ、この様式で作曲を学ぶことになる学習者は今でも多い。

その後、ベートーヴェンが壮年期に「ラズモフスキー弦楽四重奏曲」でプロの演奏家が演奏会のために演奏する曲として確立し、さらに晩年にはプロの演奏家が何年もかけて研鑽するべき崇高な作品を残したこともあって、交響曲やピアノソナタと同程度に重要なジャンルとみなされるようになった。

ロマン派

しかし、ベートーヴェン以降のロマン派の時代には、シューベルトとドヴォルザークを除いてあまり数多くは作曲されていない。ベートーヴェンの後継者と評されるブラームスでも3曲作曲しただけにとどまっている。より近代に近い世代のレーガーは6曲を残した。

近代

このようなベートーヴェンの重圧による寡作の時代があったが、その間に決して弦楽四重奏曲が重要なジャンルと見なされていなかったわけではない。たとえば、交響曲やピアノソナタのような「古典的な」音楽には否定的な意見を持っていたドビュッシーですら、弦楽四重奏という「古典的な」ジャンルで、1曲だけだがト短調の四重奏曲を発表している。もっとも、のちにラヴェルが恩師フォーレに捧げた四重奏曲同様、ドイツ・クラシックの権化のような調性音楽上のこのジャンルは、形式上はその体裁を保っていたとはいえ、印象主義の時代には既に古典的な形式の好例と見なされていたことがうかがわれる。両者の作品は双生児のような扱いになっており、録音の際はカップリングされることが多い。

近代では、バルトークが6曲の弦楽四重奏曲を作曲し、高く評価されている他、新ウィーン楽派もこのジャンルに重要な作品を残している。
その後も、トッホ、ミヨー、ショスタコーヴィチらはこのジャンルのために生涯をかけて多くの作品を残した。

現代

第二次世界大戦後の前衛の時代に於いてもベリオ、ブーレーズ、ノーノなどによって無視できないジャンルと見なされた。
シュトックハウゼンは「このような古典的なジャンルとは一切かかわりたくない」という創作態度であったものの、結局はアルディッティ弦楽四重奏団の委嘱に「ヘリコプター付き」との条件付で作曲した(ヘリコプター弦楽四重奏曲)。21世紀を迎えた現在も、このジャンルへ挑戦する作曲家は後を絶たない。

前述のシュトックハウゼンのように弦楽四重奏プラスアルファといった形態の作品も目だって増えるようになった。シルヴァーノ・ブッソッティの「グラムシの種子」、ヴォルフガング・リームの「ディトゥランブ」は弦楽四重奏とオーケストラのための作品である。

Wikipedia-弦楽四重奏

Wikipedia-弦楽四重奏曲

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